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第32話 白椿

Penulis: るるね
last update Tanggal publikasi: 2026-03-12 22:42:52

 一条は陽菜をマンションの下まで送ると、そのまま帰っていった。上まで上がることはなかった。

 去り際も相変わらず笑みを浮かべたままで、助手席に座った一条はわざわざ窓を下ろし、陽菜のほうを見て「じゃあ、また」と声をかけた。

 陽菜は花束を抱えたまま、その車が通りの先で見えなくなるまで見送っていた。完全に姿が消えてからも、しばらくその場に立ち尽くしていたが、やがてゆっくりとマンションの中へ入っていった。

 この花束をそのまま鷹宮に渡すのは、どうしても気が引けた。

 あまりにも意図的すぎる気がして、陽菜にはそんなことはできそうにない。

 花を贈るという行為は、どうしても少し特別な意味を帯びてしまう。

 一条は人をからかうのが好きだから、気軽に陽菜へ花を渡したのだろうが、陽菜には同じことを平然とする勇気はなかった。

  幸い、部屋の中を探しているうちに、使われていない花瓶を見つけた。

 淡い紫色の瓶身はすりガラスのようなやわらかな質感で、光を受けるとほのかに霞んだ輝きを帯びる。下の部分は丸みを帯びてふっくらと膨らみ、上に向かうにつれてすっと細くすぼまる、しずくのような可愛らしいシルエットだっ
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